スウェーデン滞在日誌(11/02)



先週、48時間有効のストックホルムカードを買っておいたので、 この週末は博物館巡り。

この日はユールゴーデン(Djurgaarden)島へ行った。 ここには北方民族博物館(Nordiska museet)、 ヴァーサ号博物館(Vasamuseet)、 生物学博物館(Biologiska museet)、 水生博物館(とでも訳せばいいのか?)(Aquaria Vattenmuseum) が固まっており、 近くの野外博物館Skansenには動物園と水族館(Akvariet)がある。

湖岸近くに並ぶ建物

島自体はガムラスタンからスケップスホルメン島をはさんで、すぐ東側にある。 ヴァーサ号博物館の建物がガムラスタンから見えているので、 てくてく歩いていったのだが、島に渡る橋がけっこう東の方にあり、 意外と遠かった。素直にバスに乗ったほうが速かったか。

ユールゴーデン島

本土から見えるユールゴーデン島。 真ん中の大きな船の右に見えている、マストのある建物がヴァーサ号博物館。 その左側にある教会のような塔の突き出た建物が北方博物館。


生物学博物館

とりあえず生物学博物館に入る。 武器博物館や中世ストックホルム博物館が意外と大きかったのに比べ、 ここはずいぶんと小さい。 基本的にはスウェーデンの動物の剥製が並んでいるだけで、 一般的な動物を集めた大展示室が1つと、 ラップランドなど生態系の異なる地方の小展示室がいくつかあるだけ。

大展示室の熊 大展示室のヘラジカ

大展示室は丸い部屋の周囲360度を巨大なガラスケースが取り囲んでいて、 熊やヘラジカなどの大型動物から鳥まで、生活環境を再現しながら詰め込んである。 ガラスには1区画ごとに番号が振ってあって、 入り口で貸してくれる展示物の一覧(英語あり)と付き合わせると、 動物の名前が確認できる。

煙突の上のコウノトリ 岩壁に並ぶ海鳥

この大展示室は3層構造になっていて、 上の階に上がると、同じガラスケースの上のほうにいる鳥を見たり、 地上にいる動物を見下ろしたりできる。

入り口のあたりにさりげなく展示してある剥製は、 よく見るとかなりヘンな代物だった。

謎のUMAの剥製

ウサギと鳥のキメラ動物。 説明文によると、昔この地方で話題になったUMAで、 調子に乗って剥製まで捏造したのがコレらしい。 日本のどこかの寺に伝わる、人魚のミイラみたいなものか。

謎の熊の剥製

こちらは一見、ただの熊の剥製なのだが、 よく見ると母熊が子熊を抱きかかえて二足歩行しているうえ、 もう一頭の子熊の手(?)を引いている。 説明文に素性が書いてあるが、 何年だかにロシアの何某が捕獲して作った剥製で、 何年にスウェーデンに持ち込まれたが、この博物館にある理由は定かではない、と、 なぜか最後のところだけあいまいになっている。

この当時はこういう現実の生態を無視した剥製を作るのが流行っていたらしい。 実際、後日に訪れた自然史博物館には、 「直立してパイプをくわえたワニの剥製」という頭の痛くなるような代物まであった。


北方博物館

次に入った北方博物館は撮影禁止なので、建物の写真だけ。

博物館とは思えないほど立派な建物だが、中も3階ぐらいの吹き抜けになっていて、 やたらと広々としている。 豪勢な作りではあるのだが、 その広大な吹き抜けを囲むように小さな展示室が配置されているので、 空間の無駄使いのような気もする。

展示品は、地下に農耕以前と思しき時代の道具などが展示してあり、 あとはわりと新しい時代のもの。 名前からは予想できなかったが、ここは文化史の博物館らしく、 靴に始まり、衣類、椅子、食卓の再現など、かなり地味な展示室が並んでいた。


Skansen入り口

昼になったので、昼食の場所を探しがてら見物しようと、 すぐ近くの野外博物館スカンセンに入る。 写真のゲートは小さいが、もう少し立派な正門が反対側にある。

園内は敷地の端の方が動物園になっていて、 中央から南部、東部のあたりは、 北欧各地から移築した農家などが建っている。 動物園といっても園内が区切られているわけではなく、 家畜などは復元した農家の側で飼われていたりして、全体がごちゃまぜ。

トナカイ ヘラジカ

展示してある動物はスカンジナビア半島の生き物が中心で、 当然ながらトナカイやヘラジカがいる。

フェレット フェレット乱闘

フェレットは向こうから寄ってきたり、その辺で乱闘していたり。 たいていの動物は、檻ではなく、 その動物が乗り越えられない程度の柵やフェンスで囲まれているだけ。 フェレットも触れるほど近くに来るのだが、 とうぜん(スウェーデン語だから読めないが、たぶん) 「噛み付くので注意」と書いてある。 しかし、なぜかわざわざ手袋を外して素手を差し出し、 噛み付かせて満足している兄ちゃんがいた。

熊 狼

熊と狼。トナカイやヘラジカはただの木の柵だったが、 さすがに人間に危害を加えそうな動物は堀などで出てこられないようになっている。

フクロウ

フクロウ。ただのフクロウなのだが、 くるくると首を回すたびになぜかスウェーデン人は大うけ。

ヤマネコ

山猫。スカンジナビアにいる猫族では、これが最大の種らしい。

クズリ

小型の熊のように見えるが、 柵に書いてあったWolverineというのをあとで調べたら、 イタチ科のクズリという動物らしい。 スウェーデンでは100頭足らずしか生息しておらず、絶滅危惧種だとか。

アザラシ?

たぶんアザラシ。数頭がプールの中を勝手に泳ぎまわっている。 頻繁に浮上するので見るのは簡単なのだが、 写真を撮ろうと思うとけっこう難しい。

(たぶん)カワウソ 巣穴から出てきた(たぶん)カワウソ

たぶんカワウソ。アザラシと同じで勝手に泳ぎ回っているのだが、 プールの縁に人口の巣穴が作ってあり、 巣の中に戻ってきたカワウソがガラス越しに見られるようになっている。

スカンセンの塔 スカンセンの塔から見たストックホルム市街

北の方に上っていくと、塔が建っている。 エレベータで上がるとカフェがあり、 そこからさらに階段を上ると展望台になっているが、 市街の中心から少し離れているので眺めは今ひとつ。 中央駅の近くにある市庁舎の塔なら眺めが良さそうだが、 この季節は閉鎖されていて上がれない。

どこかの地方の農家 たぶんフィンランドの農家

塔のあたりにいくつかレストランらしきものはあったが、 時期が時期だけに閉まっている。 しょうがないので東の方を下り、出口のほうに向かう。 このあたりは昔の農家などが移築されて、 日本の明治村のような状態になっている。

風車 マイルストーン

農家のほかに教会や風車があったり、道端にマイルストーンがあったり。 しかし、基本的には田舎の普通の建物が集まっているので、非常に地味。 博物館というよりは、 暖かい時期に公園のつもりで遊びに来たほうが良さそうな所だ。

中心付近には鴨が泳いでいる池があり、 近くに食べ物の屋台らしいボックスが並んでいた。 夏場は賑わっていそうだが、 池のふちに氷が張っているような状況では人もまばらで、屋台も全部閉まっている。 唯一、火を起こして焼いた魚を売っている屋台があったが、 果たして商売になっているのだろうか。 挑戦してみようかと思ったが、 メニューを見てもどんな魚やらさっぱり判らないのでやめておいた。

園内を完全には回りきれなかったが時間もなくなって来たので、 出口近くのカフェテリアで昼食を済ませ、最後に南端の水族館(Akvariet)に入る。 案内板に従って行ったら土産物屋に着いてしまい戸惑ったが、 ここの店員さんにお金を払い、 カウンタ脇を通って奥の水族館に入るというシステムだった。

サル山?

入るといきなり猿がいる。 水族館というより、 熊やトナカイのように屋外で放し飼いができない生き物を集めた建物のようだ。

どうでもいいが、日本で言うところの「サル山」に、 なぜ「転落しそうな車」 というユニバーサルスタジオばりの演出がしてあるのだろう。

手を突っ込めそうな水槽

展示されている生き物はそれほど多くなく、 あまり珍しいものもいなかったが、 大水槽の上が開いていて手を突っ込めそうなのには、 ちょっと驚いた。中で泳いでいるエイをつかみ取りできそうだ。

水族館の出口近くには、 タランチュラのような大蜘蛛とヘビに触れられるコーナーがあり、 地元の子供がおっかなびっくりで手を出していた。


市電

スカンセンを出た後、17:00まで開館しているヴァーサ号博物館は後回しにして、 水生博物館に向かう。ここも展示の規模は小さいが、 見せ方が面白い。

熱帯雨林の水辺 ウツボ

左の写真は熱帯雨林の水辺を再現した池で、 アロワナとか(たぶん)ピラニアとかが泳いでいる。 危険との注意書きがあるが囲いがないので、 足を踏み外したら池に足を突っ込んでしまう。 大丈夫なのか? 写真がかなりボケているのは水蒸気が立ち込めているため。


ヴァーサ号博物館

最後にヴァーサ号博物館に入る。

ヴァーサ号は三十年戦争の英雄グスタフ=アドルフ王の時代に建造された新鋭戦艦で、 建国王ヴァーサの名をとっていることからしても、 相当に期待された艦だったと思われる。 ところが処女航海に出発した直後に湾内で沈没するという、 わが国の空母信濃*1も顔負けのとほほな最期を遂げた。 20世紀になって引き上げられ、完全な状態の船では最古のものとして、 専用の博物館を建てて展示したらしい。 Skokloster城の工事現場といい、 歴史学者が泣いて喜ぶようなものがいろいろと、 怪我の功名のようにして残った国だ。

*1 建造中だった大和級3番艦の艦体を転用した巨大空母。 戦艦ベースで重装甲のため沈みにくいと期待されたが、 完成したときにはすでに米軍に制海権を握られていた。 結局、横須賀から呉へ回航中に潜水艦に雷撃され、紀伊半島沖であっさり沈没。 実戦の機会はなかった。

前方から見たヴァーサ号

正直、沈没船1隻と関連物だけだからたいしたことないだろうと思っていたが、 甘かった。

当時の最大級の戦艦(乗員437人らしい)というのは、 とんでもなくでかいのですな(全長62m)。 かなり広い空間に、でーんと木造船が安置してあるのだが、 どこから見てもカメラのフレームに収まらない。

今まで回った博物館には王宮など撮影禁止のところや、 地中海博物館のようにフラッシュ不可のところもあったのだが、 展示物保護の観点から一番まずそうなここはなぜか制限がないらしく、 みんなパシパシとフラッシュを焚いている。 説明によると船体を保護するため照明を暗くしているらしいのだが、 フラッシュは長時間持続しないから大丈夫なんだろうか。

横から見たヴァーサ号 ヴァーサ号の艦尾

まあ、禁止されていない以上はいいのだろうとこちらもフラッシュを使っていたが、 これは大失敗。ここまで撮影対象がでかいと、 小型カメラのちゃちなフラッシュの光などぜんぜん届かないのだった。 というわけで、細かい展示物はそれなりに写っているが、 肝心のヴァーサ号の写真はなんとか判別がつくていどの写真にしかならなかった。 真っ黒でなにも見えないという人は、モニタの明るさを調整してみてください。

なお、ここはめずらしく日本語や中国語のパンフレットがおいてあるほか、 あちこちに書いてある解説も、英語どころか日本語まで書いてある。 しかし訳がかなりめちゃくちゃ。 「slide show」が「絵遊び」って、なんやねん。

ヴァーサ号の模型

ヴァーサ号の復元模型。後ろに本物があるのだが、暗くてほとんど写っていない。

艦内の復元模型 ヴァーサ号を飾る像いろいろ(左下は除く)

館内は中央にヴァーサ号が安置され、これを取り囲むように数階層のフロアが 設けられている。階段を登り降りすると、上のフロアから甲板を見下ろしたり、 最下層のフロアで船底を見たりできる。

各フロアにはヴァーサ号とともに引き上げられた遺物や、 復元模型などが並んでいる。 写真の像は艦を飾っていたものの復元で、 今の実物は色が落ちて全体が黒っぽいが、 当時はこういう派手な色使いだったらしい。 色使いといい造形といい、けっこう悪趣味な気がする。

白兵戦要員の武具その1 白兵戦要員の武具その2

軍艦なので武器もいろいろ展示されている。 大砲や砲弾のほか、当時は砲撃戦のあと横付けして白兵戦をやっていたので、 銃や剣などもある。 もっとも、沈没時は試験航海だったためか、 白兵戦要員は乗っていなかったらしい。

なぜ沈没したのかを説明する映画を上映しており、 スウェーデン語と交互に英語版もやっていたので見てみる。 建造責任者などの似顔絵が出てきて、 査問会みたいな掛け合いをやったあげく、 「結局、誰も責任を問われませんでした」で終わり。 10分かけてそんなオチかい。

艦載砲レプリカ(売り物!)

ギフトショップの入り口に1/2スケールの艦載砲のレプリカがあった。 飾りかと思ったが、値段らしきものが書いてある。 105,000SEK(140万円ぐらい)って……洒落?



最終更新: 2006年 3月 30日 木曜日 17:54:36 JST

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